講義がはじまる

歓迎会の次の日はひどい二日酔いだった。午前中に出なくてはならない説明会が大学であったのだが、気分が悪くてそれに出席することができなかった。午後になるとようやく気分が良くなってきたので、午後から始まる説明会に出席した。
 新入生歓迎週間が終わると、本格的に大学生活が始まった。私は毎朝7時ごろ起きて、朝ご飯を食べて、シャワーを浴び、9時から始まる朝一の講義に出席するために大学に向かった。毎朝8時頃の電車に乗っていたのだが、それはいつも混んでいた。都心にある、私の大学のある駅に近づけば近づくほど、電車の中は人間でぎゅうぎゅう詰めになった。電車の中には立っている乗客が倒れないようにつり革がついていたのだが、そんなものを使う必要がなかった。なぜなら電車はまるでオイルサーディンの缶詰めの中のいわしのように人間がぎっしり詰まっていたので、転倒する心配が全くなかったから。電車がカーブになっている線路にさしかかり、車体が斜めに傾くと、車内のあちこちから押しつぶされた人たちの出すうめき声が聞こえてきた。40分ほどでようやく大学のある駅に着くと、私はその電車から逃げるように飛び出して、大学に向かった。空気の悪い電車を出た後で、朝の新鮮な空気が美味しかった。
 大学の一つの講義は90分で、午前中に二つの講義、午後に二つから三つの講義を受けた。一日の講義が終わると、同じ学部で仲良くなった学生と、大学内のレストランでだべったり、時には大学の近くにある安い居酒屋に彼らと飲みに行ったり、お互いのアパートに行って遊んだりした。自分のアパートに帰ったら、講義の予習、復習でもすべきだったのだろうが、朝の九時から夕方五時まで五つの講義を受けた後では、そんな気分にはなれなかった。大学に入る前は、自分の行きたい大学の行きたい学科に入れたのだから、自分のやりたい勉強を思いっきりしようと勢い込んでいたのだが、実際大学に入ってみると、そこまで勉強する気は起らなかった。

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