私の入った大学のそばには、きれいな桜の小道があった。入学式が終わると私はその小道に向かった。両親がそこで私のことを待っていてくれたからだ。小道に行くと、二人は桜の木の下にあるベンチに並んで座っていた。二人に近づくと、父が私に言った。
「どうだった?」
「何が」と私は言った。すると父は苦笑しながら、
「入学式だよ」と言った。
「あぁ」と私は言った。「退屈だったよ。長いスピーチがあって。校歌を歌って」
それを聞いた父はやれやれといった風情で頭を振り、ベンチから立ち上がると、「じゃあ、飯でも食いに行くか」と言った。
私たち三人は大学の近くにあるレストランに向かった。テーブルにつくと、私たちのところにウェイターがやってきて、それぞれの目の前にメニューと水の入ったグラスを置いた。メニューを見ながら、父が言った。
「ビールでも飲むか?」
すると母親は顔をしかめて言った。「まだ早いんじゃない?」
「まぁ、いいだろう」と父が言った。父が瓶ビールを二本注文すると、ウェイターが中瓶の瓶ビールと小さなグラスを三つ運んできて、私たちのテーブルの上に置いた。父は瓶ビールを取り上げて、私のグラスにビールを注いでくれた。そのビールはよく冷えていて、とても美味しかった。
食事が終わると私たちは買い物をするために、大きなデパートがいくつもある隣の街に向かった。そこで私の両親は、おみやげや自分たちのために洋服などの買い物をした。買い物が終わると私たちは空港に向かった。私の両親はその日のうちに家に帰らなくてはならなかったから。
空港の保安検査場に入る前に、父が私に言った。
「気をつけてな。これからは一人暮らしなんだから」
「分かってるよ」と私は言った。
「何かあったら電話して」と母親が言った。
「そっちも気を付けて」と私は言った。しばらく話をした後で、二人は検査場の中に入っていった。検査場の中に入っていきながら、二人は時々私の方を振り返り、手を振った。私も二人に手を振った。二人が検査場の中に入って、完全に姿が見えなくなってしまうと、私は踵を返して、地下鉄の乗り場に向かった。地下鉄に乗って、私は一人暮らしを始めるために借りたアパートに向かった。
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